7月のはじめ、環境に配慮した棺「エコフィン」を製造販売しているウィルライフ株式会社が主催するコミュニティ「これから楽交」のセミナー「"私らしさ"葬送計画 散骨は素敵だ」に参加させていただきました。講師は海洋自然葬の風、代表の松木さん(※取材当時)で、少人数のセミナーは出席者同士のディスカッションの場にもなり、私にとってもいろいろなことに気づかされた良い機会となりました。
エコフィン・ラボと呼ばれる建物は緑のつるで覆われた建物でした。中に入るとエコフィンの棺が展示してあります。「トライウォール」という素材を使っているエコフィンと同じように、机・椅子・展示什器にもすべてこの素材が使われているのに驚きました。棺に使用する木材は間伐材を使い、売上の一部をモンゴルへの植林に利用するというコンセプトにも興味深いものがありました。実は先日私の祖母の葬儀でもこのエコフィンを使用したのですが、植林のことまでは知らず・・・。
セミナー資料で配られた「自分らしさ葬送ナビ」では、葬儀・供養について分かりやすく説明しています。人が亡くなったら必要なものは「死亡手続」「車」「棺」「骨壺」の4つだけで、あとはすべてオプションで遺族が好きにできるという事が書いてあります。私も経験があるのですが、いざ家族が亡くなると何をどうしてよいか分からず、結局葬儀社にいわれるままに火葬・葬儀・埋葬までをおこなうことになるというケースが多いようです。
もちろん葬儀社を信頼してすべてお任せする、それでも良いと思います。ですが必要なこと以外はいろいろな選択肢があることを事前に知っていたら「自分はこうやって逝きたい」と思うかも知れません。そのことを知っただけでも、これからの自分の生き方が変わっていくはずだと思いました。
海洋自然葬の風、松木さん(※取材当時)の話が始まり、出席者の皆さんがメモを取りながら熱心に聞いていたのが印象的でした。海外からの散骨依頼が増えていること、海洋散骨や合祀・納骨といったお墓以外の方法が近年増えていること、海洋散骨においては実に8割の遺族が遺骨のすべてを散骨するということ、散骨をするかしないかの決定は故人の遺志と遺族の意思それぞれが半分ずつ作用しているということ。こうやってあらためて説明を受けると新鮮な知識となって入ってきます。
粉骨や、献花、献酒など散骨の流れについての説明が始まると、出席者の皆さんが散骨・海洋葬について初めて聞くことが多いということに気づきました。私をはじめ業界で散骨に関わっている業者にとって、相手が「知っているだろう」と思い込んでしまうことは陥りやすく危険なことだとあらためて痛感しました。すべての方に分かりやすくお伝えすることをもう一度見直していきたいと思います。
セミナーの最後に出席した皆さんが感想を発表しました。遺骨を粉骨して散骨することについて「粉末のほうが悲しくない」「海と一体となって天に昇っていく感じがして良い」などの意見や、故人一人ひとりに合わせて作る風オリジナルの「花かご」について「とてもロマンチック」と話していたのを聞いて、この短時間のセミナーで皆さんが散骨・海洋葬のイメージをそれぞれに持つことができ、「逝き方」の選択肢になったのだと実感しました。また参加者の中にクリスチャンの方がいて、遺骨にこだわらない文化もあるということを話してくださいました。このようにいろいろな選択肢を持つことでより豊かな人生が過ごせるのだと思います。
大切な人を失うことはたとえようもなく辛く、悲しいことです。その悲しみを乗り越えるためにも、故人への想いをかたちにした葬儀・供養が必要なのではないでしょうか。散骨は確かに素敵だと思います。ただもっとその人らしい、自分らしい素敵な「逝き方」があるかも知れません。今日のセミナーで散骨・海洋葬がどのような葬送なのか、それを知ったことで皆さんの最期を決める選択肢がひとつ増えたこと、それがとても大切なことなのだと感じました。
自分らしさ葬送ナビには、
"「逝き方」を考えることは「生き方」を振り返ること。"
と書かれています。素晴らしい「生き方」をしている方にはきっと素晴らしい「逝き方」が見つかるのだと信じたいです。