前回の海洋葬サミット(2014年2月)から1年、一般社団法人として新たにスタートした「日本海洋散骨協会」主催の第3回海洋葬サミットに参加させていただきました。総勢34社の出席で開催された今回の海洋葬サミットは、今の散骨・海洋葬を見つめなおして、これからどのように発展させるのかを占うものになりました。このサイトをご覧の皆様にもサミットの内容について一部レポートさせていただきます。
※前回の海洋葬サミットレポートはこちら。
まず村田ますみ会長(ブルーオーシャンセレモニー)より開会の挨拶があり、そのあとに協会顧問の竹内優宏弁護士より、出席事業者に協会が制定した「海洋散骨ガイドライン」について詳しい説明がありました。今回集まった34社はすべてが協会員ではありません。全国で海洋散骨をおこなう事業者として、業界の動きや同業他社の動向を知っておきたいという意識の高い事業者がこれだけ集まったのは、おそらく初めてのことだと思います。竹内弁護士の説明の後に、補足として西大悟理事(墓守代行センター※旧社名、現在はNプラン株式会社)より、「乗船時の喪服礼服の着用禁止」をガイドラインに追記することの報告がありました。さらに「周辺環境に配慮して、献花は花頭・花びらのみとし、海に放つ献花の量も少ないほうが望ましい」と説明がありました。
また、ガイドラインもこれで完成ではなく、協会会員や非会員の事業者から幅広く意見を聞いてより良いものに変えていく方針であることと、非会員であっても是非ガイドラインを遵守して欲しいということの説明がありました。会員、非会員を問わず散骨・海洋葬が適正におこなわれ、業界が発展することを願う協会の姿勢は素晴らしことだと思います。
ガイドライン説明のあと質疑応答が行われ、議事の中心になったことが2つありました。
1.違法業者の出現をどう防ぐか
2.漁業やその他の海を生業とする方々への配慮と共存
違法業者とは、たとえば遺骨をそれと分からないように細かくする粉骨作業をおこなわずにそのままの状態で海に放つ(※遺骨遺棄罪に該当する場合があります)、海岸もしくは海岸近くの人目につきやすい場所などで散骨をおこなう事業者のことを指していて、仮にそのような業者が現れて行政からの取り締まりを受けることになれば、ルールを守って散骨をおこなっている事業者に影響があるだけでなく、何よりも故人を海に還したいという遺族の想いを叶えることができなくなってしまいます。
漁業やその他の海を生業とする方々への配慮と共存については、先ほどお話しした「喪服礼服の着用禁止」「献花は花頭・花びらのみ」という部分が配慮に当たります。その他、漁場・養殖場・航路を避けることなどがガイドラインに記されています。琉球海葬からはダイビングスポットで献花(リース)の茎が腐敗して海中に残っていることで自粛を求められたことの紹介があり、地域ごとに海の事情は異なり、細かなルールを統一することはなかなか難しいと感じました。
一方、海洋自然葬の風からは「散骨施行会社として海の事業に積極的に関わっていく」ということの提案がありました。実際、風は湘南の海において海岸清掃などの事業に積極的に参加して海洋散骨そのものの認知向上に努めているそうです。
海にかかわるすべての方々の理解を得て散骨・海洋葬を行えることが理想であることには違いありませんが、現状は各散骨施行会社がそれぞれの地域における「海のローカルルール」に配慮し、各々がその海域で共存を図っていく努力をしていかなければならないのだと思います。
西理事からの「各社が自分の海域を守ることで、全国の海を守ってほしい。」という話には、その先にある「遺族の想い」を叶えることができる環境を作り、それを守って欲しいという気持ちが込められていました。
サミット終了後、場所を懇親会場に移して各社活発な情報交換が始まります。将来の散骨・海洋葬の在り方を協会の垣根を超えて真剣に話し合う姿は、これから海洋散骨を検討されている方にとってはとても心強いことだと感じました。特にここ1・2年で散骨を始めた事業者の方は、先輩の事業者にいろいろと話を聞いていました。初参加の事業者のみなさんは、「来てよかった」と感想を話してくれました。
現在、海洋散骨の市場規模は恐らくそれほど大きいものではないでしょう。その中で自己の利益を考えずに、必要と思われる情報は会員・非会員問わず発信するという日本海洋散骨協会の方針は本当に素晴らしいことだと思います。もちろん、協会を維持するためには大変なご苦労をされているはずです。一般社団法人として再スタートを切ったばかりの苦労は、数年後には顧客満足というかたちで加盟事業者に返ってくるに違いありません。
・海洋散骨をおこなうご遺族のために
・海にかかわるすべての方々のために
・環境を守るために
すべてを満たすためにはまだたくさんの課題があり、どれか一つに偏ると他方のものが欠けてしまう状況であることは否めません。第一は散骨を希望する故人、ご遺族のために。その想いを実現するための環境を作っていくことが必要です。これからこの大きな課題にどう取り組んでいくのか、日本海洋散骨協会の活動に期待したいです。