全国の海洋散骨事業者が加盟している一般社団法人日本海洋散骨協会が認定する「認定海洋散骨アドバイザー」の検定試験を取材してきました。受検者は半日かけて海洋散骨について学び、試験に合格した方が認定海洋散骨アドバイザーとして活動することができます。
今回で13回目となる認定海洋散骨アドバイザー検定試験。メディアに取り上げられるなど注目を集め、受検希望者も増えてきました。認定制度スタート時は、散骨事業者や葬儀、墓石、供養業界関係者の受検が多かったのですが、最近は海洋散骨の知識を身につけたいという一般の方の受検も目立つようになりました。
その背景には、海洋散骨が一般の方により身近になってきたことと、家族や自分自身の死後について、お墓以外の多様な選択肢を求める声が増えてきたことがあると考えられます。
ガイダンスが終わると早速講義が始まります。講義は「海洋散骨概論」「宗教面から見た海洋散骨」「海洋散骨に関する法律」「海事法規」の4つ。一見難しそうな内容ですが、受検者の皆さんは申込時に送付されたテキストを事前に読み込んで参加しているため、自己学習の確認と復習の講義になります。
最初は村田ますみ 講師(株式会社ハウスボートクラブ、ブルーオーシャンセレモニーを運営)による「海洋散骨概論」です。海洋散骨とは?という第一歩の内容から、海洋散骨が求められている社会的背景、海洋散骨にまつわる現状や遺骨の一部を納める手元供養品についてなど、いくつかの視点で説明します。
特に環境を守ることの必要性、ルールとマナー、墓じまいからの海洋散骨、最近多くなってきている代行(委託)散骨専門業者の実態などを例に「供養」とは何かを問いかける内容が印象的でした。
2つ目の講義は増澤正見 住職(真言宗豊山派僧侶、長福寺住職)による「宗教面から見た海洋散骨」です。住職がご自身で経験された海上での供養のお話、宗教家と海洋散骨の現在のかかわり方、戒名の話や海洋散骨を選択した檀家との関係など、身近な問題について説明がありました。
3つ目と4つ目の講義は高松大 講師(高松海事事務所代表、海事代理士・行政書士)による「海洋散骨に関する法律」「海事法規」です。難しい法律の話をユーモアを交えて解説してくれます。特に海事法規(海や船にかかわる法律)については参加者ほとんどが初めて聞くことばかりで、全員が熱心に講義を聞いていました。
認定海洋散骨アドバイザー検定試験では、海洋散骨を施行した遺族の方を招いて海洋散骨をおこなった経緯や感想、当時の心の内などを語っていただく時間があります。今回は奥様を亡くされて日本海に散骨を行なった男性S.Hさんのお話でした。
海洋散骨とは何か。真の意味でそれを知っているのは大切な人を海へ送った遺族の方なのかも知れません。参加者全員が熱心にS.Hさんの話に耳を傾ける姿を見ると、こうやって話を聞く機会はとても貴重で、大切なことなのだと改めて感じました。
最後は20分間の検定試験です。テキストと講義の内容をもとに、選択式50問のテストを解いていきます。合格点は75点以上、講義をしっかり聞いていれば難しい問題ではなさそうです。この試験に合格した人が、晴れて認定海洋散骨アドバイザーとなります。
法律に関する講義で高松先生が言った「節度を持って海洋散骨を行なうことが大切。ごみを捨てるようはやり方はしてはいけない。」という言葉が、現在の代行(委託)散骨に対する懸念を表しているようにも感じ、強く印象に残りました。
新たに海洋散骨アドバイザーとなった皆さんには、大切な人を海洋散骨で送ること、供養することの意味を深く考え、伝えていって欲しいと思います。