東京湾で海洋散骨を行っている東京海洋散骨の大きな特徴は、宮古島・石垣島といった沖縄の離島での散骨に対応しているところです。今回は宮古島沖で執り行われたチャーター散骨に同乗してきました。当日の様子をレポートします。
11月上旬の宮古島、当日は朝から雨が降り注ぎ風も強めで、決して良いコンディションとは言えない状況でした。とはいえスケジュールを調整してやっと家族で集まれたこの日を逃したくありません。東京海洋散骨の芳賀さんと船長が安全を最優先に慎重に協議して、出港を決めました。
東京の雨は空も海も暗くどんよりとした感じですが、宮古島は空が曇っていても海は碧くて明るい。いつもの乗船取材とは違う不思議な感覚でした。乗船されるご家族には感染対策として、お一人ずつ検温と手指消毒をして、マスクを着用して乗船します。
今回乗船されたのは宮古島にお住いのご家族と、神奈川県から来られたご家族でした。あいにくの天気でしたが、皆さん明るい方で、芳賀さんやスタッフと昔からの知り合いのように、気さくに会話をしていたのが印象的でした。きっと相談の段階からご家族との距離が近くなる工夫をされているのでしょう。
船内で集合写真を撮影した後、ゆっくりと船は港から離れて沖を目指します。雨も風も少し弱くなった気がしますが、今日の気温は島の人にとってかなり寒く感じるようで、ほとんどのご家族が散骨ポイントまで船室内で過ごしていました。
散骨ポイント到着までの間、芳賀さんは船室内にいるご家族と、もう一人のスタッフは後部デッキに出ていたご家族とそれぞれ会話をしていました。コミュニケーションをとりながら乗客全員に目配りをする連携ができています。
宮古島沖合の散骨ポイントに到着。少し先に大型船の姿がいくつか見えます。外海の波風が強く、一時退避していた船のようです。風向きを考慮して左舷後方から散骨を行います。予めリクエストされていた音楽がポータブルスピーカーから流れ始めます。
粉末化した遺骨が入った水溶性の袋をひとり一袋ずつ散骨します。少し波風があったので、足腰の弱い高齢の方にはスタッフがしっかりサポートにつきます。一人が散骨を終えるたびに、ご家族が大きく手を振ってお別れの言葉をかけます。
献花でお別れの際、空が明るくなってきました。風も止み、しばらく静かな時間が流れました。色とりどりの花びらが美しく碧い海に映えます。東京湾では出会えない光景に、しばらく時間が経つのを忘れてしまいました。
散骨から献花、献酒、そして海へ向かって手を合わせる数分間、雨も風もおさまり、太陽の光が差し込みました。これまで天候が悪くても散骨を行う時だけは天気が良くなる、という不思議な現象に何度か遭遇してきましたが、あれだけ出港時に強かった雨風が一瞬でも和らいだことには驚きました。
散骨が終わった後はそのまま港に戻ります。天候が良ければ伊良部島の近くまで観光クルージングを行うこともあるそうです。今日は遠くに伊良部大橋が見える場所から、故人に「行ってらっしゃい」と声をかけて、ご家族全員で明るく見送りました。
事前相談から親身に対応している東京海洋散骨は、遺骨の引き取り、現地でのお迎え、乗船・下船のサポート、船内での見守りと会話、すべて当たり前のことと考えて行っています。その積み重ねが心のこもった価値あるサービスとなっているのだと実感しました。
東京海洋散骨の宮古島沖散骨は、年間に複数回行われています。なぜ沖縄の事業者ではなく、東京海洋散骨に宮古島での散骨の相談・依頼が入るのか。その理由が今回の取材で分かったような気がします。