今回のクローズアップは、おそらく日本初ではないかという新しい散骨のかたち「オンライン散骨」をレポートします。東京のブルーオーシャンセレモニーに委託散骨（代行散骨）を依頼したご家族がパソコンやタブレット、スマートフォンを使って、船に搭載したカメラから散骨の様子をリモートで見守ることができる海洋散骨です。

※パソコンの画面を切り取っているので、画像が粗くなっています。予めご了承ください。

Zoom（ズーム）を使って委託散骨を中継

まず初めに、オンライン散骨はビデオ会議ツール「Zoom（ズーム）」を使用できる環境があれば、どなたでも参加できます。パソコンやスマートフォンにZoomアプリをインストールする、もしくはブラウザでZoomを表示する方法があります。また、参加するにはブルーオーシャンセレモニーより送られた接続URL（またはミーティングID・パスワード）が必要です。

散骨ポイントまで東京湾の景色をライブ

開始時刻になりました。コーディネーターの池田さんから散骨ポイントへの到着予定時刻など、スケジュールの説明が終わると出港します。使用する船は委託散骨用の小型船です。後方デッキには本日散骨を行う故人の遺骨が布に包まれた箱に、大切に保管されています。船に搭載されているカメラは船の正面と後方に1台ずつ、前方のカメラが東京湾の景色を映しています。

船はレインボーブリッジを越えて散骨ポイントの羽田空港沖まで向かいます。当日は曇りでしたが、たまに雲間から陽が差し込むくらいの天気でした。ご家族そろって画面越しに船が進む様子を見ることができるのも、オンライン散骨の特徴です。

お一人ずつ時間をかけて散骨

散骨ポイントに到着すると、画面固定について説明がありました。やり方を画面に表示してくれるので、操作が苦手な方も安心です。画面固定が完了すると、散骨を行う船の後方デッキのカメラ画像が大きく映し出されます。

画面上に故人の氏名が表示され、池田さんより「これより○○様の散骨を行います。ご家族の方はどうぞお声がけください。」と呼びかけられます。Zoomを使ったオンライン散骨は、リモートでご家族の声を船に届けることができるのです。ご家族からのお別れの言葉が終わると、村田船長が一人ずつ丁寧に海へ送り出します。

乗船散骨と同じように最後まで丁寧に

上の写真は実際に散骨の様子を映したモニター（21インチ）を撮影したものです。端末をテレビに接続すると、もっと大きな画面で見ることができます。散骨式の間は音楽が流れ、故人の紹介、ご家族からのお別れの言葉、散骨・献花という一連の流れが散骨を行う故人の数だけ繰り返されます。

すべての散骨が終了すると、黙とうをして10回号鍾を鳴らす「十点鍾」で故人を送り出します。ご家族が乗船する散骨と流れはほとんど変わりません。画面越しに参加者全員が鐘の音を聴き、黙とうを捧げます。離れた場所でも同じ時間を共有できるということは、乗船できないご家族にとってはとても価値のあることだと思います。

試行錯誤で実施できたオンライン散骨

船が桟橋に戻り始めると、池田さんの挨拶でオンライン散骨は終了しました。今回のオンライン散骨、じつは相当な試行錯誤を重ね、入念なリハーサルを経て実現したものでした。取材で特に驚いたのは散骨の様子を映し出していた後方デッキの画像が固定されて、ほとんど揺れていなかったことです。

取材後その理由を聞いてみたところ、村田船長が自作でカメラの固定器具を作られたということでした。リモートであっても散骨の様子をしっかりと伝えたいという、ブルーオーシャンセレモニーのこだわりを感じました。

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新型コロナウイルスの影響で、全国的に個別（チャーター）散骨・合同散骨は通常よりも少ない乗船人数に設定されていますが、高齢の方や持病のある方などは乗船をしない委託散骨（代行散骨）を選択することが多くなってきています。今回取材したオンライン散骨は、時代に合った新しい散骨のスタイルとして広がっていきそうです。

ご協力いただいた散骨施行業者